1. トランプが提示した関税とは?
まず「関税」という言葉を簡単に説明します。関税とは、外国から輸入されるモノに対してかけられる「税金」のことです。たとえばアメリカが日本から車を買うとき、その車に25%の関税がかかると、輸入する側は本来の価格に加えてさらに25%分を払わなければなりません。
2025年、トランプ前大統領が打ち出したのは、この関税を大幅に引き上げるという政策です。具体的には、EU(ヨーロッパ連合)やメキシコには30%、日本や韓国には25%、ブラジルには最大で50%もの関税をかけるとしています。これまで10%程度だった国々も多いため、これは異例の高さです。
なぜそんなことをするのかというと、トランプ氏は「アメリカの産業を外国から守るため」と説明しています。外国のモノが安く入ってきすぎると、アメリカ国内の会社や工場が損をしてしまい、仕事が減ってしまうからです。関税を高くすれば、外国のモノが高くなり、アメリカ国内のモノが売れやすくなる。そうすればアメリカの工場が動き、雇用が生まれるという考え方です。
2. 関税が上がると企業と消費者にどう影響するの?
関税が上がると、企業が外国からモノを仕入れるのにお金がかかるようになります。たとえばアメリカのスーパーがメキシコから安い野菜を仕入れていたとします。しかし関税が30%もかかるようになると、その野菜は以前よりずっと高くなってしまいます。
企業はその「高くなった分」を自分たちでかぶるか、それともお客さんに価格を上げて転嫁するかを選ばなければなりません。多くの場合、企業は商品価格を上げる方向を選ぶので、結果的に消費者の生活費が上がります。つまり、トランプ氏の政策は「企業にとっては守りになるかもしれないけど、消費者にとっては負担になる」可能性が高いのです。
3. 日本経済への影響(とくに自動車)
日本は自動車を多くアメリカに輸出している国です。トヨタ、日産、ホンダなど、名前を聞いたことがある会社がたくさんあります。これらの会社が作った車の多くは、アメリカで売られています。
ところが、アメリカが日本車に25%の関税をかけるとどうなるでしょう? たとえば200万円の車なら、関税が加わって250万円になります。これではアメリカの人たちは「日本車、高くなったな…」と感じて、あまり買わなくなってしまうかもしれません。そうなると、日本の自動車メーカーの売上が減ります。売上が減れば、利益が減り、従業員の給料や雇用にも悪影響が出ます。
ある民間の試算によると、この関税政策で日本の経済全体(GDP)が約0.8%縮小する可能性があるとされています。これは「ほんの少し」のように見えて、国全体では何兆円にもなる大きな話です。
4. メキシコ・カナダ・ブラジルの影響
アメリカはメキシコから多くのモノを輸入しています。自動車部品、野菜、果物、家電製品などです。関税が30%になると、それらが急に高くなり、アメリカの企業はメキシコからの輸入を控えるかもしれません。
そうなると、メキシコにある工場は売上が減ってしまい、工場閉鎖や人員削減が起きる可能性があります。これはメキシコの経済全体にとって大打撃です。ある報道では、GDPが最大4%も減るリスクがあると指摘されています。
カナダも同様で、木材やエネルギーの輸出に影響が出ると、産業が冷え込みます。ブラジルは最大50%という非常に高い関税がかかる国で、銅やアルミなどの資源の輸出が大きく減ると、経済成長が止まる恐れがあります。
5. 為替(通貨)の動きも要注意
「為替」とは、簡単に言うと国と国との通貨の交換レートのことです。たとえば1ドル=150円というのが「為替レート」です。
トランプ氏の政策がアメリカにとって「経済が強くなる」という印象を与えれば、投資家たちはドルを買います。ドルが買われればドル高になります。一方で円やユーロは売られ、価値が下がります。これを円安といいます。
6. アメリカ国内のメリットとデメリット
トランプ氏の政策で、一部のアメリカ国内の会社は利益を得る可能性があります。たとえば、外国からの鉄やアルミが高くなれば、アメリカ国内の鉄やアルミが売れるようになります。これは雇用を守るという意味ではプラスです。
ただしその一方で、消費者が払うモノの値段は上がります。たとえば冷蔵庫やスマートフォン、車など、私たちの生活に身近なモノの多くは外国から部品を輸入して作られています。関税が高くなると、それらの価格が上がり、生活コストも増えることになります。結果的に、消費者にとっては「物価が上がるのに給料は増えない」という状態になるかもしれません。
7. 今後の注目点と未来のシナリオ
今、アメリカと各国は関税についての交渉を続けています。もし交渉がうまくいって関税が一部撤回されたり緩和されたりすれば、経済への悪影響は少なくなるかもしれません。
しかし、もし交渉が失敗し、各国が「じゃあうちもアメリカ製品に関税をかけるぞ!」と報復し合うことになれば、貿易戦争が長期化する恐れがあります。そうなると、世界全体の経済が冷え込み、企業の業績が悪化し、株価が下がり、失業が増えるといった悪循環に陥ってしまいます。
だからこそ、今後の交渉の行方がとても重要なのです。